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名作には必ずリアルなキャラクターがいるわけです。
そういえば「進撃の巨人」のライナーは自分に都合がいい嘘を並べたり、罪悪感でメンヘラになったり、少年漫画のキャラと思えないほど人間くさいキャラでした。
てことで今回は「人間が抱えがちな認知の歪み=バイアス」のパターンを色々ご紹介します。
バイアスとは
バイアスとは、ざっくり言えば人間の脳に備わった「思い込み」や「判断のクセ」のことです。
たとえば、こんなふうに考えたことはないでしょうか。
- 「みんなが良いって言ってるし、たぶん良い商品なんだろう」
- 「レビューの星が多いから、これはハズレじゃないはず」
- 「ランキング1位なら、きっと一番おもしろいに違いない」
こういう判断は、完全に間違いとは言えません。レビューや人気を参考にすれば、いちいち全部を調べなくてもスピーディーに決断できます。
サバンナで草むらがガサガサ揺れたときに、「これは風か? 小動物か? ライオンか?」と冷静に統計分析していたら、たぶん食われます。だから人間の脳は、かなり雑でも素早く判断するようにできているわけです。
ただ現代は、サバンナと状況が変わりすぎました。
昔は命を守ってくれた思考のショートカットが、今では「ムダな商品を買う」「SNSの空気に流される」「変な情報を信じる」「自分を過大評価する」みたいな損につながることも多いです。
というように、バイアスは往々にして不合理です。だからこそ、バイアスまみれのキャラクターはリアルな性格になります。
てことで、これから紹介するバイアスをキャラの思考パターンに組み込めば、共感されやすいキャラができあがるかもしれません。
バイアス一覧
てことで、創作に使いやすいバイアスをいろいろ並べます。
1. インパクトバイアス
自分の未来の幸せ、または不幸を、必要以上に大きく見積もってしまう心理です。
- 「結婚したら幸せかと思ってたけど、そうでもなかったなぁ」
- 「受験に失敗したら人生終わりと思ってたけど、そうでもなかったなぁ」
- 「この夢さえ叶えば、今の苦しさは全部なくなるはずだ」
人間は、大きな出来事が起きれば自分の感情も一生変わると思いがちです。
でも実際は、良いことにも悪いことにもけっこう慣れます。受験に落ちても腹は減るし、恋が叶っても洗濯物はたまる。そこが人間の残酷なところですな。
2. 現状維持バイアス
変化をおそれ、現状を維持しようとし続ける心理のことです。
- 「この会社はブラックで最悪だ。でも転職はめんどうだし、このまま続けよう……」
- 「今のパートナーとの関係に明るい未来を感じない。でも2年も付き合ってるし……」
- 「変えたほうがいいのはわかるけど、今さら全部やり直すのはしんどいなぁ」
人間は、変化そのものにストレスを感じます。
たとえ今が地獄でも、見慣れた地獄のほうが、知らない天国より安心に見えることがあります。嫌なリアルですな。
3. 利用可能性ヒューリスティック
思い出しやすい情報を、実際以上に重要だと思ってしまう心理です。元記事の「利用バイアス」は、心理学的には「利用可能性ヒューリスティック」と呼ぶほうが近いです。
- 「テレビで良いって言われてたから、糖質制限ダイエットしよう」
- 「ネットでみんなが『無理』って言ってるから、在宅ワークは諦めよう」
- 「事故のニュースを見たばかりだから、飛行機に乗るのが急に怖くなってきた」
人間は、統計よりも「最近見たもの」「強烈だったもの」「身近な人の体験談」に弱いです。
数字よりエピソードのほうが心に刺さる。だからキャラも、たまたま見聞きした情報に人生を振り回されるとリアルになります。
4. サンクコスト効果
すでに投じた時間やコストを回収したくなってしまう心理のことです。
- 「この本つまらないけど、一度読み始めたから最後まで読まなきゃ」
- 「このダイエット法は効果なさそうだけど、高い料金を支払ったから続けなきゃ」
- 「ここまで頑張ったんだから、今さら失敗だったなんて認められない」
努力家ほど危ない心理です。
頑張った人ほど、自分の頑張りを否定できません。だから沈みかけた船に、最後まで乗ってしまうわけです。
5. 現在バイアス
未来のことより、「いま目の前」のことを優先してしまう心理です。元記事の「現在志向バイアス」は、この現在バイアスとして扱うと自然です。
- 「健康に悪いのは知ってるけど、お酒もタバコもたしなんでしまう」
- 「すぐに支払いしたほうが得だけど、ついついリボ払いにしてしまう」
- 「締切が近いのはわかってるけど、動画をもう一本だけ見たい」
人間の「明日から本気出す」は、だいたい明日も言っています。
未来の自分を信用しすぎなんですよね。今日できないことを、なぜか明日の自分ならできると思ってしまう。人間の不思議です。
6. 平均以上効果
「自分は平均より優れてる」と思い込みやすい残念な心理です。
- 「私は普通の人より車の運転は得意なほうです」
- 「私は普通の人より感受性豊かです」
- 「自分はそこらへんの人より冷静に物事を見られるタイプです」
多くの人が「自分は普通よりちょっと上」と思っています。
全員が平均以上なら平均とは何なのか、という話ですが、人間の自己評価はけっこう都合よくできています。
7. ダニング=クルーガー効果
能力が低い人ほど、自分の未熟さに気づきにくく、自己評価が高くなりやすい現象です。
- 「ちっ、前の車の運転下手だなー。下手くそは路上に出んなよ」
- 「あぁバイアスのことね、知ってる知ってる。前に本で読んだから。一冊だけ」
- 「この分野の専門家って、なんでこんな簡単なこともわからないんだろうな」
ただし、単に「バカほど自信満々」という意味で使うと雑です。
ポイントは、実力が足りないだけでなく、自分の実力を測る力も足りないところです。初心者ほど世界が簡単に見える。少しわかってきた人ほど、自分の無知に気づいて震えるわけです。
8. 隠れナルシスト傾向
「自分は能力があるのに、誰も認めてくれない」と思い込む残念な心理です。厳密な心理学用語というより、創作用には「承認されない天才ぶり」や「傷つきやすい自己愛」として扱うとよいでしょう。
- 「なんであんなクソ歌が流行るかなぁ。オレが代わりに作詞してやりてぇー」
- 「あのYouTuberが人気な理由がわからんわぁー。あんなの誰でもできるし」
- 「世間がまだオレの才能に追いついてないだけなんだよな」
いますよね。脳内ではすでに大作家なのに、現実では1ページも書いていない人。
このタイプのキャラは、ただ嫌な奴にすると薄くなります。「本当は認められたい」「でも挑戦して失敗するのが怖い」という弱さを混ぜると、一気に人間くさくなります。
9. 確証バイアス
自分が信じたいことに有利な情報しか認めなくなる心理です。元記事の「感情バイアス」は、内容的には「確証バイアス」と呼ぶほうが近いです。
- 「あのキーパーはダメだ! 活躍したって? たまたまだよそんなの!」
- 「ほらミスした! やっぱりあいつは使えない!」
- 「推しに不利な情報? そんなのアンチの捏造に決まってるだろ」
人は真実を探しているようで、実は「自分の考えが正しい証拠」を探していることが多いです。
キャラ同士の対立を書くときに非常に便利です。同じ出来事を見ているのに、見たいものが違うせいで、まったく違う結論にたどり着けます。
10. 流暢性の罠
「なるほど!」と腑に落ちたことを、「理解した」と勘違いする心理です。心理学的には、処理流暢性の錯覚として説明できます。
- 「心理学の本を読み終えた。これで心理学はバッチリだ」
- 「わかりやすいビジネスセミナー動画を見た。これでビジネスはバッチリだ」
- 「この人の説明はスラスラ頭に入る。つまり、この人の言ってることは正しいんだろう」
わかりやすい説明は気持ちいいです。
ただ、「わかった気がする」と「本当にわかった」は別物です。創作では、詐欺師、カリスマ講師、怪しいインフルエンサーを描くときにかなり使えます。
11. 単純緊急性効果
重要なことより、「早く終わること」「もうすぐ締切のこと」を優先してしまう心理です。
- 「本当は勉強しなきゃいけないのに、部屋の掃除をしてしまった」
- 「全然いらないのに、タイムセールだから商品を買ってしまった」
- 「大事な企画書より、今すぐ返せるメールを先に片づけよう」
緊急っぽいものは、脳を急かしてきます。
たいして重要じゃなくても、「今だけ」「残りわずか」「あと3分」と言われると、急に価値があるように見えるんですよね。
12. 自己奉仕バイアス
「成功は自分のおかげ、失敗は他人や環境のせい」と考えたくなる心理です。
- 「今日は一日楽しく過ごせたぞ。スケジューリングを見直したおかげかな」
- 「今日は最悪の一日だった! 大嫌いなクライアントの相手をしたせいだ」
- 「勝ったのは実力。負けたのは運が悪かっただけ」
人はけっこう都合がいいです。
うまくいったら自分の手柄。失敗したら環境のせい。自尊心を守るためには便利ですが、やりすぎると成長が止まります。
13. モラル・ライセンシング
良いことをしたあとは、多少のズルや怠惰は許されると思ってしまう心理です。
- 「今日はトレーニングを頑張ったから、ダイエット中だけどケーキを食べてOK」
- 「いつもパートナーのために働いてるんだから、浮気の一つぐらい許されるはず」
- 「募金したし、今日はちょっとくらい自分勝手に振る舞ってもいいだろう」
善人が小さな悪に足を踏み入れるとき、この心理はかなり使えます。
本人の中では帳尻が合っているわけです。「自分は悪人じゃない。むしろ良いこともしている」と。闇落ちの入口として、なかなかリアルです。
14. どうにでもなれ効果
一つの計画が倒れたことを発端に、すべてヤケっぱちになってしまう心理です。
- 「ダイエット中だけど甘いもの食べちゃった。えーい、今日は好きなだけ食べちゃえ」
- 「好きなだけ食べてたら映画みたくなったな。貯金くずして映画館ハシゴじゃー」
- 「一回サボった時点でもう終わりだ。今日は全部投げ出して寝よう」
完璧主義の人ほどハマりやすい心理です。
100点が取れないなら0点でいい、みたいな雑な極端さ。人間のメンタルは、たまに小学生みたいになります。
15. プロジェクション・バイアス
いまの感情や状態が、未来まで続くと思ってしまう残念な心理です。
- 「彼女のこと大好き! 腕に彼女の名前のタトゥーを彫っちゃうぜ☆」
- 「お腹空いたなぁ。あれもこれも買っちゃおう。そして食べきれない」
- 「今めちゃくちゃやる気あるし、来月の自分も毎日5時間作業できるはず」
今日の自分と明日の自分は、わりと別人です。
夜中のテンションで立てた計画を、朝の自分が見て絶望する。あるあるですな。
16. 正常性バイアス
異常事態が起きても、「自分は大丈夫だろ」と思ってしまう心理です。
- 「オレオレ詐欺なんかに、ひっかかる人いるのかねぇ。そしてひっかかる」
- 「大雨で避難指示が出てるけど、30年なにもなかったし平気だろ。ドドド……」
- 「会社がかなりヤバそうだけど、さすがに潰れることはないでしょ」
人間は、昨日まで続いた日常が、明日も続くと思いたがります。
危険を直視するのは疲れるので、脳が「まあ平気っしょ」と言ってくるわけです。ホラーや災害ものに入れると、かなり嫌なリアルが出ます。
17. ハロー効果
一つの目立つ特徴だけで、その人や物のすべてを判断してしまう心理です。
- 「あの人は英語できるし、きっと他の能力も高いに違いない」
- 「あの人は不愛想だ。きっと性根が腐ってるに違いない」
- 「顔がいいから、性格もきっといいはずだ」
第一印象は強いです。
人間は相手をじっくり見る前に、だいたい雰囲気で判定しています。しかも、その判定をあとから理由づけします。恋愛キャラにも、カリスマ悪役にも使えます。
18. ネガティブ記憶バイアス
記憶の中の「最悪の体験」を判断の基準にしてしまう心理です。元記事の「メモリーバイアス」は、創作用にはこの名前でよいですが、心理学的には利用可能性ヒューリスティックやネガティビティバイアスに近いです。
- 「過去にクレーマーで嫌な思いしたから、接客業はぜんぶやりたくない」
- 「ラーメンに虫が入ってた! 飲食店はすべて危険だ」
- 「一度裏切られたから、もう誰のことも信用できない」
人は楽しかった記憶より、傷ついた記憶のほうを妙にリアルに覚えていたりします。
厄介ですが、それが自分を守る仕組みでもあります。トラウマ持ちのキャラや、疑い深いキャラに使いやすいです。
19. 完璧主義バイアス
100%正しい判断を探し求めてしまう心理のことです。厳密な学術用語というより、創作上は「完璧主義」や「最大化傾向」として扱うとよいでしょう。
- 「かれこれ1時間買い物を迷っている。もっといい商品があるかもしれない」
- 「こんな作品じゃ称賛されない。完璧なアイデアを思いついてから執筆しよう」
- 「失敗するくらいなら、まだ始めないほうがマシだ」
完璧を求める人は、意外と何も完成させません。
80点で出せる人のほうが、結果的に成長していくことがあります。耳が痛い話ですな。
20. バンドワゴン効果
物事の良し悪しを「大衆の支持率」で判断してしまう心理です。元記事の「人気優先バイアス」は、心理学や社会心理学では「バンドワゴン効果」と呼ぶほうが近いです。
- 「この動画は低評価のほうが多い。きっと悪い動画に違いない」
- 「オリコン1位で売れた曲だから、一番いい曲に違いない」
- 「みんなが叩いてるってことは、あいつが悪いんだろう」
人気は、それ自体が説得力になります。
中身を見る前に、「みんなが選んでいる」という事実だけで安心してしまうんですよね。炎上、流行、学校の空気、選挙などに使えます。
21. 後知恵バイアス
「こうなると思ってたんだよ」と、結果を知ったあとで賢者ぶりたがる残念な心理です。
- 「あの映画はコケると思ってたんだよ。考えなくても誰でもわかる」
- 「あの漫画は流行ると思ってたよ。第一話から輝きが違ったからね」
- 「だから言ったじゃん。最初から失敗するってわかってたよ」
人間は結果論が大好きです。
未来を予測できなかったくせに、過去になると急に名探偵になります。評論家気取りのキャラや、あとから偉そうにする上司に使うとリアルです。
22. 価値フィルタバイアス
自分の価値観で、一方的に他人の性質を決めつける残念な心理です。正式な心理学用語というより、ステレオタイプや投影、帰属の偏りをまとめた創作用の言い方として扱うとよいでしょう。
- 「友達少ないなんてかわいそう……。きっと寂しいよね☆ 友達つくろうよ☆」
- 「女はみんな感情的だから、大事な仕事は任せられん!」
- 「結婚してないってことは、どこか人間的に問題があるんじゃない?」
人は、自分の幸せの形を他人にも押しつけがちです。
しかも本人は善意のつもりだったりします。悪気がないのに人を傷つけるキャラに使うと、かなり現実味が出ます。
23. 暗黙バイアス
本人が意識していなくても、過去の経験や社会的なイメージによって判断が偏ることです。元記事の「潜在的差別バイアス」は、暗黙バイアスやステレオタイプとして整理すると自然です。
- 「友達やパートナーには優しいけど、レジの店員さんにはやたら厳しい」
- 「成功した実業家は褒めたたえるけど、非正社員にはやたら厳しい」
- 「自分は公平な人間だけど、あの属性の人は少し信用しにくいかな」
差別的なキャラを描くとき、単に「悪いやつ」にするだけだと薄くなります。
本人はむしろ「自分は常識的で公平だ」と思っているほうがリアルです。無自覚な偏見は、露骨な悪意より怖いことがあります。
24. 嫌儲バイアス
「お金儲けは汚い」「金持ちは悪者」と考えたくなる残念な心理です。心理学の標準用語というより、反商業感情や公正さへのこだわり、嫉妬、ゼロサム思考が混ざった創作用の見方として扱うとよいでしょう。
- 「応援してたYouTuberが有料メンバーシップをはじめた! 金のことしか考えてない! もう応援しない!」
- 「企業の社長はみんな卑しい人間に違いない」
- 「あいつが成功してるってことは、どこかで誰かを搾取してるんだろ」
もちろん、実際に悪どい商売もあります。
ただ、「稼いでいる=悪」と短絡すると、世界の見え方がかなり歪みます。嫉妬と正義感が混ざると、キャラとしてはけっこう面白いです。
25. 年齢ステレオタイプ
物事は「年齢や年代に左右される」と思いやすい心理です。元記事の「エイジングギャップバイアス」は、年齢ステレオタイプや世代ステレオタイプとして整理すると自然です。
- 「もう歳だから、新しいチャレンジをしても覚えられない」
- 「俺たちは若い世代だから、デジタルデバイスの扱いには長けている」
- 「昭和世代は古いし、Z世代は甘いし、平成世代は中途半端だよな」
年齢はわかりやすいラベルなので、つい便利に使ってしまいます。
でも人間は、世代だけで説明できるほど単純ではありません。親子、師弟、職場、学校などの世代間対立に使えます。
26. 変人=アーティスト評価バイアス
変わった人がつくる作品は優れてるに違いないと思いやすい心理です。これも正式な心理学用語というより、創作用の俗称として扱うのが安全です。
- 「あのアーティストは壮絶な人生を送ってるだけあって、曲に深みがある」
- 「あのアーティストのエピソードはウソだった! 曲もぜんぶクソだ!」
- 「普通じゃない人生を送ってる人の作品だから、きっと本物なんだろう」
変人であることと、作品が優れていることは本来別です。
でも人間は物語に弱いので、「作者の人生」まで作品の一部として見てしまいます。カリスマ芸術家や怪しい教祖キャラに使えます。
27. 顔の既視感バイアス
自分が知ってる人と似た顔を見ると、「性格も似てるに違いない」と思ってしまう心理です。元記事の「ファミリアリティ」は、顔の印象によるハロー効果やステレオタイプとして扱うとよいでしょう。
- 「大嫌いな上司に似た顔をしてる。きっと嫌な性格に違いない」
- 「釣り目はみんな卑しいことを考えそうだ」
- 「昔好きだった人に似てる。たぶんこの人も優しい人なんだろうな」
人は顔から勝手にストーリーを作ります。
初対面なのに「この人なんか苦手」と思うことがありますが、だいたい脳内の過去データが暴走しています。恋愛の勘違いや第一印象の誤解に使えます。
28. インポスター現象
別名、詐欺師症候群。実績があるのに、自分の実力を疑いすぎてしまう心理のことです。
- 「成功しても、いつか自分が無能とバレそうで怖い……」
- 「自分がやってることなんて、誰にでもできる無価値なものだ」
- 「褒められるほど、逆に申し訳なくなってくる」
有能なのに自己評価が低いキャラに使えます。
天才キャラをただ強くするより、「本当は自信がない」を入れたほうが人間味が出ます。読者も応援しやすくなりますな。
29. 楽観バイアス
根拠はないが、「未来は今より良くなっている」と思ってしまう心理です。
- 「就職したら、きっと幸せになる」
- 「結婚したら、きっと幸せになる」
- 「準備不足だけど、まあ自分ならなんとかなるでしょ」
楽観は悪いだけではありません。人を前に進ませる燃料でもあります。
ただし、現実を見ない楽観はトラブルの入口です。明るい主人公の長所にも短所にもできます。
30. ポリアンナ効果
過去の体験の嫌なことは忘れて、良かったことだけを誇張しやすい心理です。元記事では「ボリアンナ」となっていましたが、一般には「ポリアンナ効果」と表記します。
- 「昭和は良かった。それに比べて平成は……」
- 「平成は良かった。それに比べて令和は……」
- 「あの頃は大変だったけど、今思えば全部いい思い出だよな」
過去は編集されます。
嫌なことは薄まり、良い場面だけが名シーンみたいに残る。だから人は何度も同じ失敗をするのかもしれません。
31. 快楽の踏み車
良いことがあっても、すぐ刺激に慣れて「もっと足りない」と思う心理です。
- 「望みどおり結婚した。でも本当にこれが幸せなんだろうか」
- 「お金もある、仕事もある。でも、どこか心にぽっかり穴が開いてる気分」
- 「欲しかったものを手に入れたのに、もう次のものが欲しくなってきた」
人間の欲望は、ゴールに着いたら終わりではありません。
到着した瞬間、次のゴールが見えてしまいます。なかなか救いがないですな。成功後に空虚になるキャラに向いています。
32. プラットフォール効果
能力がある人が失敗するとお茶目に見えるが、能力がない人が失敗するとバカに見える心理です。
- 「完璧超人の〇〇さんでもミスするんだ! なんかカワイイ!」
- 「あいつまたミスしてるよ、アホだなー」
- 「怖い上司が言い間違えた。ちょっと親しみやすく見えてきた」
ミスが魅力になるには、先に「この人は有能だ」という前提が必要です。
もともと頼りない人が失敗すると、普通に評価が下がります。人気キャラに抜け感を作るときに便利です。
33. クラスター錯覚
法則がない物事に、勝手に法則を作り出そうとしてしまう心理です。
- 「私が成功したのは、毎日〇〇神社に通ったからです!」
- 「性犯罪が増える理由は、エロ漫画が増えたからだ!」
- 「最近、偶然が続きすぎている。これは何かのサインに違いない」
人間はランダムが苦手です。
何もないところに線を引き、意味を作り、物語にしてしまいます。創作者としては便利ですが、現実でやりすぎると危ないです。
34. 公正世界仮説
行いには正当な対価が返ってくるものである、と考えてしまう心理です。
- 「努力した人、つまり自分は報われなきゃおかしい」
- 「悪いことした奴には、バチが当たって当たり前」
- 「あの人が不幸なのは、本人にも何か原因があるんじゃないか」
この考え方は、物語としては気持ちいいです。
悪人が罰を受け、善人が報われる。読者もスッキリします。ただし現実は、そこまで公正ではありません。
公正世界仮説が強すぎると、被害者にまで「何か落ち度があったのでは」と考えてしまいます。正義感の強いキャラが、かえって残酷になる場面に使えます。
キャラ作りに使うときのコツ
バイアスは、キャラに適当に貼り付けてもあまり効果がありません。
大事なのは、そのキャラの過去・欲望・恐怖と結びつけることです。
- 「昔裏切られたから、他人を信用できない」
- 「努力してきたから、今さら引き返せない」
- 「成功したのに満たされないから、もっと大きな刺激がほしい」
- 「正義は報われるべきだから、報われない人にも原因があるはずだ」
- 「褒められるほど、自分の実力不足がバレそうで怖い」
つまり、バイアスは「欠点リスト」ではなく、キャラの行動に一貫性を持たせるための道具です。
読者は、キャラが間違えること自体には怒りません。むしろ「その人ならそう考えるよね」と納得できれば、間違いすら魅力になります。
まとめ
リアルなキャラクターを作りたいなら、性格を「優しい」「真面目」「明るい」だけで決めるのはもったいないです。
そのキャラが、どんな場面で判断を間違えるのか。何を怖がり、何をごまかし、どんな言い訳で自分を守るのか。そこまで考えると、一気に人間くさくなります。
人間は合理的なようで、かなり不合理です。
でも、その不合理さがあるから、キャラは面白くなります。
創作にバイアスを使うなら、用語を暗記するよりも、「このキャラはなぜ、そう考えてしまったのか」を掘るほうが大事です。
人間は弱い。都合がいい。けっこう言い訳する。でも、だからこそ物語になります。
「人の心理」が学べるおすすめ本3選

恒例の本日のおすすめ本紹介コーナーです。
今回は、バイアスについて学べる本3冊と、登場人物の心理描写がリアルなマンガ3選をご紹介します。
Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法
Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法
「みんなが正しいと思い込んでいるが統計では否定されてること」が学べる本です。読んでると「自分って先入観で物事を判断しまくってんだなー」と気づかされます。
一つ一つの項目が短くて読みやすいので、移動中にサクっと読みたいときにいいかもしれません。
ステータス・ゲームの心理学: なぜ人は他者より優位に立ちたいのか
ステータス・ゲームの心理学: なぜ人は他者より優位に立ちたいのか
「他者より優位に立ちたい=マウント合戦」がなぜ起こるのか、人は優位に立つためにどんな言動をとるのか、というエピソードが歴史的な出来事を中心にこれでもかというほど紹介されていてめちゃくちゃ面白い本。
勘違いが人を動かす――教養としての行動経済学入門
「人間は普段から合理的とは程遠い意思決定を繰り返してるぞ」という事例(ハウスフライ効果)をたくさん紹介してくれている行動経済学本。Think Smartと似たような感じですが、より身近なエピソードが多い印象がありました。
「キャラの心理」がリアルなマンガ3選
つづいて、登場人物の人間くささがリアルな漫画を3タイトルご紹介します。
闇金ウシジマくん
登場人物がクズばかりで有名な闇金マンガです。
たとえば第1話で、幼い息子のためにパチスロを卒業すると心に誓った母親が、誘惑に負けてパチンコ屋に入店しようとする描写はリアルでゾクゾクしますな。
そういや自分も1時間前に「カフェイン絶ちするぞ!」と決意したばかりなのに早速コーヒー飲んでます。人の意志力なんてそんなもんでしょう。
最強伝説黒沢
「カイジ」で有名な福本伸行先生の名作漫画です。
理想通りに行動できないジレンマや、世間との温度差など、働く大人(とくに男性)は、人間くさいおっさんたちの言動に思わず共感してしまう場面が多いのではないかと。ちなみに自分は何度も号泣しました。
進撃の巨人
説明不要な名作ですが、進撃の巨人もキャラの心理がリアルで有名です。
巨人と闘おうとしたハンネスさんがいざ巨人を見たらビビって逃げ出したり、子供たちを逃がした母親が小さい声で「行かないで」とつぶやくシーンなどが有名でしょう。
個人的には、物語前半では反体制側で体制側の情報統制を非難する立場だったハンジさんが、自分が体制側になると「情報の意味が変わったんだ」と情報統制に転じざるを得なくなってしまうシーンが大好きです。少年漫画のメインキャラにこういった葛藤を与える漫画はめずらしいですね。
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