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「自分の作品がバズって有名になればいいな」と考える創作者は多いはずです。
たとえば、フリーゲーム「青鬼」や「100日後に死ぬワニ」がネットでバズったことで人気になったように、アマチュアの作品でもネットでバズれば知名度が上がる可能性があるわけです。
ただし、物語が広まるかどうかは、作品の質だけでなく、発表する場所、タイミング、ファン層、宣伝方法、感情の動かし方など、さまざまな要因に左右されます。つまり「この型を入れれば必ずバズる」という魔法の公式はありません。
それでも、読者が「これ、誰かに話したい」と感じるアイデアには、ある共通点があります。それは、読者が無意識に持っている思い込みを、気持ちよく裏切ることです。
社会学者マーレイ・S・デイヴィスは、論文「That’s Interesting!」の中で、人が「面白い」と感じやすい理論には、受け手の前提をひっくり返す構造があると整理しました。この記事では、その考え方を物語づくりに応用しやすいように、12の発想パターンとして紹介します。
使い方:まず読者の「思い込み」を決める
12パターンを見る前に大事なのは、いきなり意外な設定を作ろうとしないことです。先に「読者は何を当たり前だと思っているか?」を考えます。
たとえば、読者が「怪物は人間を襲う存在だ」と思っているなら、「怪物は人間を守っていた」という反転が効きます。読者が「主人公は事件を解決する側だ」と思っているなら、「主人公の行動こそが事件を生んでいた」という構造が効きます。
意外性は、ただ奇抜であればいいわけではありません。読者が「言われてみればそうかもしれない」と納得できる範囲で、予想をずらすのがポイントです。
1. バラバラに見えた出来事に、実は法則があった
一見すると偶然に見える事件、謎、行動、現象に、隠れたルールがあったとわかるパターンです。
たとえば、毎回まったく違う場所で起きる怪事件が、実は星座の配置どおりに起きていた。意味不明に見えた怪物の行動が、ある条件に反応しているだけだった。こうした「混沌から秩序が見える瞬間」は、読者に強い快感を与えます。
2. 複数の原因に見えたものが、実はひとつにつながっていた
別々に起きていると思われた問題が、実はひとつの原因から生まれていたと明かすパターンです。
たとえば、街の失踪事件、王国の不作、主人公の悪夢が、すべて同じ古代装置の暴走によって起きていた。読者は点と点がつながった瞬間に、物語全体をもう一度見直したくなります。
3. 小さな出来事の裏に、大きな理由が隠れていた
些細に見える出来事が、実は大きな構造や陰謀、世界の仕組みと結びついていたとわかるパターンです。
たとえば、日記の一文字の誤字が、国家レベルの暗号だった。主人公がなくした小物が、世界の運命を左右する鍵だった。小さな違和感を大きな真相へつなげると、読者の記憶に残りやすくなります。
4. 例外だと思っていたことが、実は一般的だった
特殊な人物や事件に見えていたものが、実は世界全体に関係する現象だったとわかるパターンです。
たとえば、主人公だけが持つと思われていた能力が、実はすべての人間に眠っていた。ひとつの村だけの奇習だと思われていたものが、世界の歴史を左右する共通ルールだった。物語のスケールを一気に広げたいときに使いやすい型です。
5. 変わらないと思っていたものが、実は変化していた
不変に見えていた制度、関係、世界のルールが、実は少しずつ変わっていたと示すパターンです。
たとえば、永遠に続くと思われた王国の結界が、何年も前から少しずつ弱まっていた。ずっと味方だと思っていた組織が、時間をかけて別物に変質していた。読者が「いつから変わっていたのか?」と考えたくなる構造です。
6. 無駄に見えたものが、実は機能していた
非効率、古臭い、意味がないと思われていた行動や制度が、実は重要な役割を果たしていたとわかるパターンです。
たとえば、村人が毎朝行う面倒な儀式は、怪物の侵入を防ぐための仕組みだった。遠回りに見える修行が、最後の戦いに必要な感覚を育てていた。序盤の「無意味に見える描写」を後半で回収しやすい型です。
7. 悪いと思われていたものが、実は良いものだった
呪い、弱点、欠点、敵対者など、マイナスに見えるものの価値を反転させるパターンです。
たとえば、主人公を苦しめていた呪いが、実は敵から身を守る防御だった。嫌われ者のキャラクターが、誰にも言わずに街を守っていた。反対に「良いものだと思っていた制度が、実は人を縛っていた」という逆パターンも使えます。
8. 無関係に見えたものが、実は関係していた
関係なさそうな要素同士が、実は深くつながっていたと明かすパターンです。
たとえば、天気の変化と連続殺人、子どもの歌と古代兵器、主人公の体調と王都の結界が連動していた。読者が「そこがつながるのか」と驚く組み合わせほど、印象に残りやすくなります。
9. 両立すると思っていたものが、実は両立しなかった
一緒に成立すると思われていた価値観や関係が、実はどちらかを選ばなければならないとわかるパターンです。
たとえば、友情と王位、正義と平和、家族愛と世界の救済が両立しない。読者に「自分ならどちらを選ぶか?」と考えさせられるため、ドラマを強くできます。
逆に、「絶対に両立しない」と思われていたものが、意外な形で共存できると示すパターンもあります。
10. 増えるほど良くなると思ったら、逆に悪くなった
「多いほど良い」「強いほど勝てる」「便利なほど幸せ」という直感をひっくり返すパターンです。
たとえば、魔力が強くなるほど寿命が短くなる。味方が増えるほど裏切りの危険が高まる。情報が増えるほど真実から遠ざかる。数値や成長を単純なプラスにしないことで、物語に深みが出ます。
11. ほとんど同じに見えたものが、実は正反対だった
似ていると思っていた人物、思想、組織、能力が、実はまったく違うものだったと示すパターンです。
たとえば、同じ正義を掲げる二人の英雄が、実は片方は人を救うため、もう片方は人を支配するために戦っていた。逆に、敵対している二人が根本では同じ願いを持っていた、という形にもできます。
12. 結果だと思っていたものが、実は原因だった
原因と結果を反転させるパターンです。ミステリー、サスペンス、心理ドラマと相性が良い型です。
たとえば、「街が不気味だから住民が眠れない」のではなく、「住民が眠れなくなったから街が不気味に変わっていった」。あるいは、「怪物が現れたから戦争が始まった」のではなく、「戦争の憎しみが怪物を生んだ」。因果関係を反転させると、物語の見え方が大きく変わります。
注意点:意外性だけでは口コミは生まれない
ここまで紹介した12パターンは、あくまで「面白いアイデアを考えるためのチェックリスト」です。これらを入れたからといって、必ず作品が広まるわけではありません。
読者が人にすすめたくなるには、意外性に加えて、感情の動き、わかりやすい一言で説明できる魅力、キャラクターへの愛着、作品を共有しやすい環境なども重要です。
特にネットでの拡散では、「驚き」だけでなく、感動、怒り、不安、笑い、畏敬のような強い感情が共有を後押しすることがあります。物語づくりでは、設定の意外性だけでなく、読者がどんな感情を持ち帰るかまで設計するとよいでしょう。
まとめ
口コミされやすい物語のアイデアには、読者の思い込みを少し裏切る構造があります。
ポイントは、奇抜な設定を足すことではありません。読者がすでに持っている前提を見つけて、「実はそうではなかった」と納得できる形で反転させることです。
物語の企画に迷ったら、次のように問いかけてみてください。
- 読者は、この世界やキャラクターについて何を当然だと思っているか?
- その前提を、どこまでなら納得できる範囲で裏切れるか?
- その反転は、キャラクターの感情や物語のテーマにつながっているか?
この3つを意識するだけでも、「ただ設定が多い物語」ではなく、「誰かに話したくなる物語」に近づけるはずです。
- Murray S. Davis, “That’s Interesting!: Towards a Phenomenology of Sociology and a Sociology of Phenomenology,” Philosophy of the Social Sciences, 1971. https://doi.org/10.1177/004839317100100211
- Adam Grant, “What Makes Malcolm Gladwell Fascinating,” LinkedIn, 2013. https://www.linkedin.com/pulse/20131007120010-69244073-what-makes-malcolm-gladwell-fascinating
- Jonah Berger and Katherine L. Milkman, “What Makes Online Content Viral?,” Journal of Marketing Research, 2012. https://doi.org/10.1509/jmr.10.0353
- Eric W. K. Tsang, “That’s Interesting! A Flawed Article Has Influenced Generations of Management Researchers,” Journal of Management Inquiry, 2022. https://doi.org/10.1177/10564926211048708
- パレオな男「おもしろい!と思われるアイデアに共通する12のパターン」https://yuchrszk.blogspot.com/2014/12/blog-post_28.html